相続する場合

遺留分減殺請求の対象ー特別受益・持ち戻し免除

被相続人が亡くなった後、遺言に記載されている財産が生前に譲渡されている場合など、一見、遺留分減殺請求する対象がほとんど見当たらない場合があります。
すなわち、遺留分減殺できるのは、民法1030条から、①相続開始前1年以内にされた生前贈与(民法1030前段),②相続開始の1年以上前にされた生前贈与であっても、贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた生前贈与(1030後段)とされています。そうすると、相続開始の1年以上前で、贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知らないでなされた生前贈与は、遺留分減殺の対象にならないことになります。
しかし、最高裁は、民法903条1項の定める相続人に対する贈与(すなわち、特別受益)は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となる、と判断しています。
さらに、特別受益の場合、亡くられた方が、生前贈与が相続分の前渡しとしてではなく、当該相続人に遺産とは別個に特別の利益を与える趣旨でなされた旨の意思表示、これを持ち戻し免除といいますが、をした場合、相続財産に含めずに、遺産分割をすることになります。そこで、持ち戻しの免除がなされていた特別受益は遺留分減殺請求の対象となるのか、という問題があります。この点、最高裁は、持ち戻し免除の意思表示が遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される、と判断しています。
要するに、特別受益ならば、特段の事情がない限り、遺留分減殺請求の対象になるということです。